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4.納富哲夫テクニック時代(後半)

納富哲夫氏のテクニックは、理論と実践が太く繋がった素晴らしい考え方であることは間違いありません。口腔歯列の情報から精密な補綴物を作っていくことは、他にはない画期的な世界観がありました。しかし、ここで考えなければならないことは、元々の口腔情報は本当に正しいのでしょうか?
いままで治療したことがない未処置歯が綺麗に並んでいた場合、それは正しい口腔情報を有しているのでしょうか?

答は残念ながら「否」です。

全ての歯が揃っていても、口が開かない症状や、顎関節に痛みがあって咀嚼運動が出来ないなどの症状をお持ちの方は多くいらっしゃいます。このような患者様には、顎関節に加わる圧力が過剰になっていてそれを軽減する処置を施します。

納富哲夫氏のテクニックで口腔内の情報や顎関節の動きを再現することができても、再現した口腔情報自体に問題があれば、根本的に的外れな治療に終始することになります。

少々細かい話になりますが、顎関節が前方に動く運動を前方矢状窩路といいます。この動きと歯科で使う基準平面にフランクフルト平面というものがあります。この基準平面に対する前方矢状窩路の角度は、日本人の平均値は44度です。顎関節に問題のある患者様は、この角度が15度とか10度とか、かなり低い場合が多くみられます。
この角度の意味は、歯軋りしたとき上下の奥歯が離れるためのガイドとなります。もし歯軋りしたときに上下の奥歯が離れない場合どのようなことが発生するかというと、歯軋りの筋力が物凄く強くなります。顎関節に痛みがあるのに強く歯軋りしたら、益々顎関節に圧力が加わり、痛みが増強されます。そうなると治るチャンスは全く失われます。
痛みのため段々と睡眠も浅くなってきます。睡眠の機能は、脳と体の疲労回復、再生などがあります。あまり知られていませんが、脳の中の不必要な情報の整理と棄却作用もあります。顎関節症の患者様方は、このような出口のない状況に落ち込まれていますので、たいへんに苦しいわけです。しかし、今現在大学病院でも精神安定剤や筋弛緩剤などを投与されて終わり。ひどい場合は、精神科に紹介されて行き場を失っている方も多くいらっしゃいます。

元々の口腔情報が正しいということは、本当に一部の顎が良く成長発育し機能障害を起こしていない方々には、適用できる考え方です。しかし、精密に顎関節のデータを採得 分析しますと、本当に問題がない方は相当稀です。症状がないこと=正常ではありません。例えば、全身の健康の維持増進のため、また自覚症状のない病気を早期に発見するため、定期的にMRIやCTや血液検査をした結果、自覚症状はないけれど、癌などが小さいうちに早期に発見されて命拾いしたなどということはよくあります。歯科も同じで、自覚症状がなくとも機能不全になっていることがあります。

以上のように、元々、口腔情報が正しい情報を持つという立場は治療に限界があるということがお分かりいただけたかと思います。納富哲夫氏のテクニックでは、生理的に正しいかどうかを検査するアプローチが足りていませんでした。
次では口腔情報を適正に変化させることで顎関節を中心とする下顎から頭蓋までの適正な機能回復を可能とした理論のお話に移っていきたいと思います。

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